や、まだ!60へるつ

発達障害ADHD、双極性障害Ⅱ型、自死遺族、大学院中退、既卒就活!いきねば。

放置系研究室/論文の研究倫理

 

タイトルは重いが、内容はただの愚痴である。

 

個人的な恨みを排除すると、極めてシンプルに、全く研究に関与していない人間がファーストオーサーとして論文を出した、という内容だ。

 

 

先日、研究室からメールが転送された。全部英語で、それでも見慣れた英単語が並んでいた。

開けたら、ある論文がレセプトされたという内容だった。

それは私と3つ上の先輩のデータを抱き合わせた、短い論文だった。

 

まず、研究で心を病んでいる人間のもとに研究関連のメールを送ってくるのもちょっと考えてほしかったが、教授も義務であろうし、喜ばしいことだからと送ってくれたのかもしれない。事実、自分のデータが世に出ることは、ちょっとだけ嬉しかった。

ただそれ以上に、あの再現性もクソもない怪しいデータを公にしてしまったということに、寒気がした。

もちろん、意図的に偽装したり、捏造したりなんてことはやっていない。純粋に集め、まとめたものだ。しかし、放置系研究室で実験指導もない中、追いつめられて泣きながら卒論のために何とか採った、そんなデータなのだ。信憑性などあるものか。

 

そして何より、ファーストオーサー。

 

筆頭著者は、実験には一切関与していない博士課程の先輩だった。

もう、悔しくてやるせなくて、思わず持っていたスマホをぶん投げてしまった。

 

なぜこんなにも心が荒んだかというと、次のような経緯がある。

 

学部生で、研究室に配属されたばかりの私。そのドクターの直属の後輩になり、新しく立ち上げたテーマを共同で研究することとなった。教授からは、先輩主導でやるから、教えてもらうようにと言われた。

しかし先輩は、ほとんど大学に来なかった。別に、心を病んでいたわけではない。留学生で、養わなければならない家族もいて、バイトに明け暮れていたのだ。

後から聞いた話では、その先輩はもともと大学にほとんど来ておらず、教授は後輩ができたらその態度が改まるのではないかと私をつけたのだという。もちろん私が選んだテーマが近かったというのもあるはずだが、修士の先輩からそんな話を聞いた。その先輩方は、件のドクターに後輩をつけるべきでないと、直談判してくださったという。その時の返答がそれだったらしい。つまり、皮肉なことに実験材料は私だったということになる。

 

研究室が始まってから、私は先輩をせっついたり、先行研究をあさったり、自分で手を動かしてみたりした。

でも、実験の約束をした日も、体調不良やらなんだかんだ理由をつけて先輩は来なかった。一度、朝に少し遅れるという連絡をもらってから夕方の5時まで待っても来なかった時があって、その時はブチギレて帰った。その1時間後くらいに、先輩が研究室に来たと同期から聞いた。

 

教授にも何度か現状を訴えて、お叱りを受けてちょっとだけ実験に来たこともあった。でも、それも1週間程度で終わり、先輩はまた来なくなった。

 

結局、ほとんど一緒に研究することなく、プログラムの関係で先輩は他大学に行ってしまった。

 

ここまでで、やっぱり私ももう少し自分で考えて行動すべきだったし、博士の先輩の手伝いという意識を改めるべきだったと思う。もっと論文も読めばよかった。自分で考えるということを、避けてしまっていたところがある。反省することは無限にある。

 

大学院生に学部生の指導を一任する教授も問題だ。それも、ほとんど大学に来ない人間に右も左もわからない学部生をつけるのは、指導放棄も良いところだ。

 

このように私にも教授にも非はあったのだが、これまでの経緯から、私は個人的に博士課程の先輩を特に恨むようになった。

その先輩は、大変人が良かった。滅多なことでは怒らないし、理不尽な命令をしてきたりはしなかった。むしろ、自分がやるから、君はやらなくて良いよ、というスタンスだった。ただ、それで先輩が実際に事に手を付けたか、というとそうでもない。しかし、それも悪気があるわけではない。

だから、私はそのドクターの人となりを恨んでいたわけではない。

“私の理想の博士像から逸脱したドクター”が憎らしかったのかもしれない。現に、当時私は同期に「先輩はクソ野郎ではないがクソドクター」と愚痴を振りまいていた。

 

つまるところ、先輩として過度に期待してしまっていた私の勝手な私怨なのだ。

それでも、やはり博士課程の先輩には研究をする姿を見せてほしかった。

 

その、憎たらしい、何もやっていないドクターが、私と別の先輩のデータを使って、論文発表。それもファーストオーサー。

この研究室に、研究倫理なんて存在しないのだと、2年半の間に幾度となく繰り返してきたわけだが、私はまたしても深く失望した。

 

本当はだいぶ前からわかっていたことだ。

その先輩は何もしていないだけに、卒業が危うい。すでにオーバードクターだ。卒業要件に2本、査読付き論文を出さなければならないが、これまで一本も出していない。出せるはずもない。

 

だから、先輩がファーストオーサーになることは、もっと前に私に伝えられていた。実験に使った資材の確認の時にだ。なんとしてでも彼を卒業させなくては。教授にはそんなニュアンスのこと言われた。それだったら、博士課程なんてやめさせてしまえばいいのに。実力もないのに博士号を背負って社会に出ていく先輩も不幸だ。

 

その時ももちろん落胆したのだけど、心のどこかできっとリジェクトされるだろうと思っていた。

 

それがこの度、レセプトされた。

個人的な感情ではものすごく悔しいし、昨今重視されてきている研究倫理なんてどこの岩場に打ち捨ててきたというのか。

 

 

 

以上、ただの愚痴。

ゴキブリは自宅に出るから気持ち悪い

はじめに

先日、初めてゴキブリが気持ち悪いと思った。

 

ゴキブリ自体は、これまでに何度も見たことはある。叩き潰したことも、有機溶媒をぶっかけたこともある。排水溝からのぞく触角を引きむしってやったことさえある。

 

でも、いずれも研究室での話だ。

(うちの研究室は夏場エバポの水浴でボウフラが湧き、Dの先輩の机に常備されている食べかけの食物を求めてアリが列をなして外からやってくる魔境だがその話はまた今度)

 

自宅で対峙したのは今回が人生で初めてであり、私は世間一般のゴキブリに対する評価を再認識することとなった。

 

 

それは身の毛もよだつ体験であった。

 

 

 

 

ゴキブリの襲来

下宿先で洗濯物を取り込もうとしたとき、やつは突然部屋の中に飛び込んできた。頭の先から尻まで、大体人差し指くらいだろうか。デカかった。種類はおそらくチャバネゴキブリ。どうも、洗濯物の陰に潜んでいたように思う。

白い壁の上、圧倒的な存在感。家の中の、完全な異物。不快害虫の王。そういえば誰かが触角が気持ち悪いと言っていた。確かに気持ち悪い。長く細い2本の線がふいふいと揺れて、あたりを探っている。

 

たった一回のそれが、私のトラウマとなった。

 

ラクノフォビアである私の嫌いな虫No.1の座を24年と11か月守り続けてきたクモ。やつはそれを容易に蹴落とし、頂点に君臨した。

その日から、私はベランダの窓を開けられなくなってしまった。それがあってすぐ、心の療養(ゴキブリのせいではない、研究室のせい)のために遠方の実家に戻ったから、洗濯物は今も干したままだ。もう3週間近くたつ。結構な豪雨にも見舞われたようだから、全部捨てることになるだろう。もしかしたらすでに、風で消し飛んでいるかもしれない。

 

やつの襲来は、それだけ私にインパクトを与えた。

 

ゴキブリの何が不快か。それは、”わたしのいえ” に侵入してきたことに他ならない。林でも道端でも研究室でもなく、自分の家に出るから気持ち悪いのだ。

 

私は虫が好きだ。幼少のころは毎日のように近くの雑木林に繰り出し、虫取り網を振るっていた。それでも、カブトムシやクワガタが、壁を這い回っていたら。枕の下からダンゴムシが這い出して来たら。きれいな蝶だって、部屋の中を我が物顔で飛び回っていたら気持ち悪いに違いない。寝入りばな、枕元にカラスアゲハでもとまっていようものなら、悲鳴を上げて殺虫剤を無差別に散布する自信がある。

家というのは、外界と隔絶された、心休まる場所なのだ。

私の、私だけのテリトリー。研究で嫌なことがあっても、いつも静かに迎えてくれた心の安息地。それをやつは6本の土足で踏みにじったのだ。許せるはずがない。

 

 

当然、私はやつを殺しにかかかった。いや、ここでちょっとだけ情を出してしまったのが悪かったのかもしれない。何となく、つぶれるのが嫌ということもあって、ひとまず捕らえることにしたのだ。武器は、アイロンのカバー。セミ素手で捕まえることを得意とする私には、十分すぎる装備だ。十分すぎる、そう思っていた。油断。完全に油断した。

 

やつは速かった。そえはもう、すばしっこかった。

 

アイロンカバーを壁に打ち付けた時には、すでに隣の部屋のスーツケースに張り付いていた。そのすぐ横にはベッド。ベッドの下には、ずさんな私が大量の荷物を適当に突っ込んでいる。ゴキブリが隠れるのには最適な場所だ。ここでなんとしてでも仕留めねば、やつはそこに潜り込むだろう。そうなれば、ゲームオーバー。害虫の完全勝利。

 

さらに悪いことに、その日私は友人を自宅に誘っていた。2週間漬け込んだ梅シロップを振舞うためだ。その友人が、ラインの通知で、もうすぐ来ると。友人を、ゴキブリと仲良く待つわけにはいかない。狭い空間だ。ゴキブリの存在をまじかに感じながら飲む梅ジュースがうまいはずがない。

なんとかしてこいつを殺さなければ。今度は、確実に仕留めるため、クイックルワイパー(床用)を手に取った。

 

緊張の瞬間。

 

生物とは面白いもので、例え相手が虫であろうと哺乳類であろうと、互いに互いの緊張が伝わる。私の殺気にやつも緊張を隠さない。ピンと伸びた触角が、ゆっくりと揺れ、こちらをうかがっているのがわかる。

 

狙いを定め、弧を描く白い軌跡。

 

しかし、腕に力を込めたその瞬間から、私は敗北を悟っていた。私がモーションをかけると同時に、やつは走り出していた。その速いことといったら。ゴキブリが地球最強と言われる所以がこれなのか。確かにこいつらなら、火星で人型に進化していたとしてもおかしくはない。

 

負けが見えている中、フルスイングしたクイックルワイパーはスーツケースをなぎ倒しただけで、案の定ゴキブリはベッドの下に消えた。

 

家の中で敵を見失うことが、一番の恐怖である。同じ空間にいるという不快感と、見えないという不安。手や足に触れるもの全てが信じられず、些細な音にも過剰に反応してしまう。ここでやつを逃がしてしまったことが、トラウマの決定打となった。

 

 

 

 

まとめ

 

今回、他の虫にはない、ゴキブリの気持ち悪さというのを痛感した。

通常、このサイズの虫はまず家に出ない。たまたま侵入してきたとしても、数日で死んでしまうことがほとんどだろう。しかしゴキブリはどうか。やつらは、家の中での生活に特化している。繁殖もする。他の虫のように、光におびき出されることもなく、家具の隙間に隠れようとする。さながら、虫というよりはネズミのように。

あのサイズで空を飛び、物陰に隠れ、尋常じゃなくすばしっこく、生命力もすこぶる強い。そして何より、そんな気色悪いスーパーバグが家の中に好んで入ってきて、繁殖までするということに、不快さを覚えない人は少ないだろう。病原菌を運んでくるという話もある。仲間の糞に引き寄せられ、集まってくる習性まであるのだから、我々の神経を逆なでするために生まれてきたと言っても過言ではない。

 

 

私は今回の件まで、ゴキブリを怖がる人を内心で小馬鹿にしていた。

そのことを、心から謝りたいと思う。あれは気持ち悪いです。私も無理だ。

 

 

長くなってしまったのでこの辺で。

ちなみにこの後、私は来てくれた友人のアドバイスのおかげで、ゴキブリを仕留めることに成功する。

 

 

謝辞

待ち伏せ戦法および塩素系洗剤の有効性についてアドバイスをくれた友人

たまたま家にあったキッチンハイター(塩素系)

クイックルワイパー(床用)

ティッシュ

 

 

 

 

 

こんにちは、へるつです。

はじめまして。

へるつです。

 

現在理系大学院修士2年、就職先も決まってました。

喜ばしいことに、第一志望の企業から内定を頂くことができました。

研究内容に直結した、これまで続けてきたことを思いっきり生かせる会社です。

内定の電話を頂いたときは、ちょっと泣きそうになりました。

 

ですが、それも先月までの話です。

 

私はこれから大学院を中退し、既卒で就活を行う予定です。

様々な要因が重なった結果、捻り出した答えです。

院在学中に父が亡くなったり、双極性障害が悪化したり、ラボが完全放置だったり、色々です。

 

それでも一番の理由は、ADHDの特性を抱えたまま、正確性が強く求められる内定先でやっていく自信を失ったからでしょうか。

 

本当はもっと早く方向転換をするべきでした。ADHDだと診断されてから、それでもまだ努力したら何とかなるはずだと言い聞かせて、一番向いていない職を選んでしまいました。判断が遅れたせいで、内定先はもちろん、研究室や大学に多大な迷惑をかける事態となってしまいました。

 

来週、また先生とお話することになりました。

そこで、初めて正式に大学院をやめる意思を伝えることになります。

 

たかだか大学院をやめるというだけなのですが、私にとっては一大事です。

これまで私は、ずっと両親に認めてもらいたくて、両親が喜ぶような生き方を心がけてきました。だから、道を踏み外さないよう、親が引いたレールを必死に延長して、その上を走り続けようとしてきました。

その道を自らはずれ、オンロードタイヤのままクロスカントリーに突入する気分です。

 

ですが、今、その親もいません。

 

私は何をしようと自由です。

 

何をしようと、その責任は私だけのものです。

 

これから先、どのような道を歩むことになっても、たとえ後悔することになったとしても、その道を選んだのは私です。

 

覚悟を持って、この先の人生を決めたいと思います。