や、まだ!60へるつ

発達障害ADHD、双極性障害Ⅱ型、自死遺族、大学院中退、既卒就活!いきねば。

ゴキブリは自宅に出るから気持ち悪い

はじめに

先日、初めてゴキブリが気持ち悪いと思った。

 

ゴキブリ自体は、これまでに何度も見たことはある。叩き潰したことも、有機溶媒をぶっかけたこともある。排水溝からのぞく触角を引きむしってやったことさえある。

 

でも、いずれも研究室での話だ。

(うちの研究室は夏場エバポの水浴でボウフラが湧き、Dの先輩の机に常備されている食べかけの食物を求めてアリが列をなして外からやってくる魔境だがその話はまた今度)

 

自宅で対峙したのは今回が人生で初めてであり、私は世間一般のゴキブリに対する評価を再認識することとなった。

 

 

それは身の毛もよだつ体験であった。

 

 

 

 

ゴキブリの襲来

下宿先で洗濯物を取り込もうとしたとき、やつは突然部屋の中に飛び込んできた。頭の先から尻まで、大体人差し指くらいだろうか。デカかった。種類はおそらくチャバネゴキブリ。どうも、洗濯物の陰に潜んでいたように思う。

白い壁の上、圧倒的な存在感。家の中の、完全な異物。不快害虫の王。そういえば誰かが触角が気持ち悪いと言っていた。確かに気持ち悪い。長く細い2本の線がふいふいと揺れて、あたりを探っている。

 

たった一回のそれが、私のトラウマとなった。

 

ラクノフォビアである私の嫌いな虫No.1の座を24年と11か月守り続けてきたクモ。やつはそれを容易に蹴落とし、頂点に君臨した。

その日から、私はベランダの窓を開けられなくなってしまった。それがあってすぐ、心の療養(ゴキブリのせいではない、研究室のせい)のために遠方の実家に戻ったから、洗濯物は今も干したままだ。もう3週間近くたつ。結構な豪雨にも見舞われたようだから、全部捨てることになるだろう。もしかしたらすでに、風で消し飛んでいるかもしれない。

 

やつの襲来は、それだけ私にインパクトを与えた。

 

ゴキブリの何が不快か。それは、”わたしのいえ” に侵入してきたことに他ならない。林でも道端でも研究室でもなく、自分の家に出るから気持ち悪いのだ。

 

私は虫が好きだ。幼少のころは毎日のように近くの雑木林に繰り出し、虫取り網を振るっていた。それでも、カブトムシやクワガタが、壁を這い回っていたら。枕の下からダンゴムシが這い出して来たら。きれいな蝶だって、部屋の中を我が物顔で飛び回っていたら気持ち悪いに違いない。寝入りばな、枕元にカラスアゲハでもとまっていようものなら、悲鳴を上げて殺虫剤を無差別に散布する自信がある。

家というのは、外界と隔絶された、心休まる場所なのだ。

私の、私だけのテリトリー。研究で嫌なことがあっても、いつも静かに迎えてくれた心の安息地。それをやつは6本の土足で踏みにじったのだ。許せるはずがない。

 

 

当然、私はやつを殺しにかかかった。いや、ここでちょっとだけ情を出してしまったのが悪かったのかもしれない。何となく、つぶれるのが嫌ということもあって、ひとまず捕らえることにしたのだ。武器は、アイロンのカバー。セミ素手で捕まえることを得意とする私には、十分すぎる装備だ。十分すぎる、そう思っていた。油断。完全に油断した。

 

やつは速かった。そえはもう、すばしっこかった。

 

アイロンカバーを壁に打ち付けた時には、すでに隣の部屋のスーツケースに張り付いていた。そのすぐ横にはベッド。ベッドの下には、ずさんな私が大量の荷物を適当に突っ込んでいる。ゴキブリが隠れるのには最適な場所だ。ここでなんとしてでも仕留めねば、やつはそこに潜り込むだろう。そうなれば、ゲームオーバー。害虫の完全勝利。

 

さらに悪いことに、その日私は友人を自宅に誘っていた。2週間漬け込んだ梅シロップを振舞うためだ。その友人が、ラインの通知で、もうすぐ来ると。友人を、ゴキブリと仲良く待つわけにはいかない。狭い空間だ。ゴキブリの存在をまじかに感じながら飲む梅ジュースがうまいはずがない。

なんとかしてこいつを殺さなければ。今度は、確実に仕留めるため、クイックルワイパー(床用)を手に取った。

 

緊張の瞬間。

 

生物とは面白いもので、例え相手が虫であろうと哺乳類であろうと、互いに互いの緊張が伝わる。私の殺気にやつも緊張を隠さない。ピンと伸びた触角が、ゆっくりと揺れ、こちらをうかがっているのがわかる。

 

狙いを定め、弧を描く白い軌跡。

 

しかし、腕に力を込めたその瞬間から、私は敗北を悟っていた。私がモーションをかけると同時に、やつは走り出していた。その速いことといったら。ゴキブリが地球最強と言われる所以がこれなのか。確かにこいつらなら、火星で人型に進化していたとしてもおかしくはない。

 

負けが見えている中、フルスイングしたクイックルワイパーはスーツケースをなぎ倒しただけで、案の定ゴキブリはベッドの下に消えた。

 

家の中で敵を見失うことが、一番の恐怖である。同じ空間にいるという不快感と、見えないという不安。手や足に触れるもの全てが信じられず、些細な音にも過剰に反応してしまう。ここでやつを逃がしてしまったことが、トラウマの決定打となった。

 

 

 

 

まとめ

 

今回、他の虫にはない、ゴキブリの気持ち悪さというのを痛感した。

通常、このサイズの虫はまず家に出ない。たまたま侵入してきたとしても、数日で死んでしまうことがほとんどだろう。しかしゴキブリはどうか。やつらは、家の中での生活に特化している。繁殖もする。他の虫のように、光におびき出されることもなく、家具の隙間に隠れようとする。さながら、虫というよりはネズミのように。

あのサイズで空を飛び、物陰に隠れ、尋常じゃなくすばしっこく、生命力もすこぶる強い。そして何より、そんな気色悪いスーパーバグが家の中に好んで入ってきて、繁殖までするということに、不快さを覚えない人は少ないだろう。病原菌を運んでくるという話もある。仲間の糞に引き寄せられ、集まってくる習性まであるのだから、我々の神経を逆なでするために生まれてきたと言っても過言ではない。

 

 

私は今回の件まで、ゴキブリを怖がる人を内心で小馬鹿にしていた。

そのことを、心から謝りたいと思う。あれは気持ち悪いです。私も無理だ。

 

 

長くなってしまったのでこの辺で。

ちなみにこの後、私は来てくれた友人のアドバイスのおかげで、ゴキブリを仕留めることに成功する。

 

 

謝辞

待ち伏せ戦法および塩素系洗剤の有効性についてアドバイスをくれた友人

たまたま家にあったキッチンハイター(塩素系)

クイックルワイパー(床用)

ティッシュ